研究背景​

高齢化社会

我が国は65歳以上の人口が過去最高の3,624万人となり、総人口に占める割合は29.0%という超高齢化社会となりました(令和3年度版高齢社会白書より)。

そして要支援・要介護となる原因の24%は運動器の障害で、うち半数近くが変形性ひざ関節症等の関節疾患です。

運動器疾患は、日常生活動作(ADL)を下げ、生活の質(QOL)の低下を招きます。

日本整形外科学会では、運動器の障害のために立ったり歩いたりするための身体能力(移動機能)が低下した状態指す「ロコモティブシンドローム(ロコモ、または運動器症候群)」予防の啓発を行っています。
また、 2023年に厚生労働省より提示された「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」においても、健康維持のための適度な運動が推奨されています。

私たちはQOLと健康維持に不可欠ともいえる運動器疾患の治療へ取り組んでいます。

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症( osteoarthritis of the knee)は加齢・肥満・遺伝・外傷などの原因により膝関節の軟骨表面が摩耗・変性し、膝に痛みを感じ、曲げ伸ばしが困難になる疾病です。

羅患率が極めて高く、進行性かつ難治性の疾病ですが、現在までに根本的な治療法は開発されていません。

高齢化とともにOAの患者様はさらに増加することが懸念され、根本的な治療法の開発が急務となっています。

変形性ひざ関節症の有病率

出典:古賀良生編集『変形性膝関節症ー病態と保存療法』

細胞シートによる再生医療

細胞シート」技術は、温度応答性培養皿という特殊なコーティングを施した培養皿で細胞を培養することで、酵素的な処理をする必要がなく、非侵襲的にシート状に細胞を周囲のマトリックスごと回収可能な技術です。

1989年 東京女子医科大学名誉教授 岡野 光夫博士

OAの治療では、移植された軟骨細胞シートは損傷部分の保護や軟骨再生に必要なタンパク質の分泌を行い、本来の軟骨組織への再生に貢献すると考えられます。私たちは、患者様ご自身の軟骨組織から作製した「自己細胞シート」、多指症由来の軟骨組織を原料とした「同種細胞シート」の開発に取り組んでいます。

これらの軟骨細胞シートを用いた治療ではこれまでは実現できなかった、潤滑性・可動性・耐荷重性に優れた関節軟骨本来の硝子軟骨での修復再生を可能にします。